昨年4月に第53期溶接学会会長を拝命してから,早いもので1年が経過しました.本会の活動に対して,会員の皆様および賛助員各社より,格別のご支援・ご高配を賜っておりますことに厚く御礼申し上げます.
昨年,本会は創設90周年を迎え,10月に記念イベントとして,東京・一ツ橋ホールにて第9回国際溶接シンポジウム(9WS)を,米国溶接協会第10回Trends in Welding Research国際会議と合同開催致しました.その9WSスペシャルセッションにて,本会の活動状況について,研究委員会活動,全国大会,シンポジウム・セミナー,教育,広報・出版,若手の会,国際活動,支部活動などを含めて紹介する機会をいただき,本会が会員皆様それぞれの,学会活動への深いご理解とご尽力に支えられていることを改めて実感致しました.
さて,本年は,我が国溶接界が新局面を迎えて始動する元年にあたります.昨年10月5日にプレス発表致しましたが,本会(JWS)と日本溶接協会(JWES)は,両団体で運営を図ってきた日本溶接会議(JIW)を改組し,国際溶接学会(IIW)への対応を充実させるとともに,その傘下で両団体の共同事業(事業連携)を推進することを宣言致しました.ねらいは,溶接学会の極める「学問知」(溶接・接合科学の基盤および先進研究による“つなぎ”の学問体系の構築)と,日本溶接協会が育む「技術知」(溶接・接合技術の実用化・標準化と要員認証による“つなぎの”技術体系の構築)を両輪とした,世界でイニシャチブをとれる我が国の“溶接力”の持続的発展です.
この共同事業の企画・立案は,JIW「共同企画委員会」が担い,JWSから企画委員会の代表4名(小職もメンバーの一人)と,JWESから総合企画会議の代表2名および業界代表理事2名を加えた4名の,計8名で構成されます.今年2月にそのキックオフミーティングが開催されました.まず,共同事業のポリシーとして,
- 我が国溶接界に大きなアドバンテージを与えると感じさせる共同事業の企画
- 産・学双方の立場から見た,魅力あるテーマの設定
- 学会員および協会員のそれぞれにメリットのある事業運営
を確認し合い,国際活動・標準化活動の展開,取り組むべき次世代の溶接・接合技術,守備する産業範囲,教育・訓練体系のあり方,人材育成・技術継承など,様々な観点から自由に意見交換を行いました.
そこで浮かび上がった課題は,
- 我が国溶接界の現状・実態を把握した学協会活動ができているか
- 我が国溶接界のニーズにマッチした研究者数,技術者数を輩出できているか
- 実現場で必要な技術と最先端研究の仕分けができているか
- 元請けと下請けの技術ギャップを解消する仕組みができているか
- 溶接界への人材取込みのためのPRがうまくできているか
など,両団体の活動原点や基本理念に関するものが多く,社会のニーズ・実態をふまえた発想がコアとなることを再認識致しました.共同企画委員会では,このような各課題に対する打ち手を協奏して考え,世界にアピールできる連携活動へと発展させていきたく思います.
溶接・接合研究は“つなぎ”の科学であり,それを実用化した“つなぎ”の技術によって,ものづくりが支えられています.そして,ものづくりの「知」をつなぐことが,次世代への技術伝承と人材育成につながっていきます.溶接学会は,溶接・接合研究のメッカとしての求心力を磨きつつ,日本溶接協会との事業連携に取り組み,ものづくりの「知」をつなぐ科学を探究して参ります.
会員の皆様には,今後の学会活動へのより一層のご支援とご協力を賜りますよう,何卒宜しくお願い申し上げます.
|